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『るろうに剣心 最終章』2部作感想|あまりにもったいない終幕だった理由

この実写映画版『るろうに剣心』最終2部作は、総製作費50億円、撮影期間7か月、エキストラ延べ6000人、キャスト&スタッフ約2,200人という超大規模なプロジェクト。
昨年公開の予定から1年近くの延期を経ての公開となりましたが、緊急事態宣言ど真ん中の最悪のタイミングにぶち当たるかわいそうなことに……しかし、結果として週末興行収入ランキングで連作が1位&2位となる映画史上初の快挙を達成、シリーズの人気の高さを証明し、しっかり利益も獲得したようで何よりです。

まずは、結論から申し上げましょう。
原作の『るろうに剣心』および、これまでの実写映画シリーズファンとしては、この最終2部作はイマイチでがっかりするところのほうが多かった。特に『The Beginning』はシリーズのこれまでの欠点が集積されていて退屈極まりない内容になっていて失望した、ということです。
言いたいことがたっぷりなので、サクサクと進めていきましょう。でも、まずは褒めますよ。

 
ネタバレなしで先に述べておきたい実写版『るろうに剣心』シリーズの絶賛箇所
後に述べるたくさんの不満点のことは置いておいて、この『るろうに剣心』実写映画シリーズは本当に偉大だと思うんです。
十把一絡げにダメと語られることも多かった「マンガの実写映画化作品」の中でも、「『るろうに剣心』と『ちはやふる』だけは別!」だと言わしめているのですから。

そうなっただけの理由は、まずは実写にしてもバカバカしくない見事なビジュアルを作り上げていること。
日本最高峰のスタッフが集結し、美術・衣装・撮影それぞれが、リアル系の時代劇と、荒唐無稽なマンガのバランスを上手く取り合ったものになっているんですよね。

そして、言わずもがな、アクションが本当にすごい。
これもリアルな剣闘とは一味違う、常人離れしたジャンプや疾走をする荒唐無稽さがありながらも、ギリギリで「ありえない」ものにもなっていない、ケレン味たっぷりで大興奮できるという、絶妙なバランスで仕上がっているんですよね。
「いかにも吊って動かしています」なわかりやすいワイヤーアクションではないというのもポイント。
このシリーズのMVPはアクション監督の谷垣健治氏と言って差し支えないんじゃないでしょうか。

これらの美点は『The Final』でも順当に進化。
ブレイクダンス」を思わせる動き、壁を華麗に走り抜けながらも「重力」を感じさせるアクションに、「SUEEEE!」となるのは必然です。

もちろん超豪華な俳優の魅力も大きく、特に生身でこれらのアクションをこなす佐藤健は本当に素晴らしい!(ソースが見つからなかったので定かではないけどたぶん今回もスタントではなくて自分でアクションをやっている)
もちろん演技力とキャラのハマりぶりも規格外で、予告編でも観られる、掠れて震えるような、「お前を止めればならぬ…!」の言い方とかもう100点満点ですよ!

 

加えて、今回は筋骨隆々でやはり尋常ならざる身体能力と演技力の持ち主である新田真剣佑との対決が観られるというわけで…!
この佐藤健vs新田真剣佑アクロバティック大チャンバラを観るだけでも、『The Final』は絶対に観る価値があると断言します。

 

そして、かなりシリアスかつリアルよりな作風にシフトチェンジした『The Beginning』でも、けっこうケレン味のあるチャンバラがあるんですよね。特にオープニングの、とあるギミックのある大立ち回りは感動すらありました。
『The Beginning』では幕末の動乱の時代の空気感を、存分に再現しているのも見どころ。スタッフとキャストの本気は「これでもか」と見える作品に仕上がっています。

ネタバレなしで先に述べておきたい実写版『るろうに剣心』シリーズの問題点
さてさて……大変申し訳ないのですが、ここからはほぼディスりモードに入ります。

実写映画版『るろうに剣心』シリーズでけっこう言われていた不満、「ドラマパートが退屈」ということがこの最終2部作ではどちらも相当しんどいことになっていました。
『The Final』は138分、『The Beginning』は137分とどちらも2時間半に迫る上映時間をかけているのはあまりに冗長。少なく見積もっても、編集を工夫するだけでも30分以上は削れるでしょう。

しかも、『The Final』では中盤に敵の猛襲を受けた登場人物がだいたいずっとしょんぼりしているんですよ。しかも回想を繰り返したり、キャラが(原作にもあるんだけど)心情をゆ〜っくりと吐露するシーンも多いし…あの…中盤が本気で退屈なんですけど…!となってしまったのです。

それでも、『The Final』はその後にアクションの大見せ場が待ち受けている、終盤のバトルのカタルシスに向けての「タメ」とも言えなくもないので、しょんぼりしているシーンも肯定できなくはなかったんです。
しかし、『The Beginning』はそもそもの話が暗く、仕方がないとは言えカタルシスを得られない内容なので、より退屈さが加速していました。

これは大友啓史監督の演出のせいでもあるしょう。俳優の演技をじっくりと撮って良くなる映画ももちろんありますが、この『るろうに剣心』シリーズでは原作にあったセリフをもって登場人物の心理をゆっくりと「説明」してしまっているので、そのタメのある演技の意味も損なわれてしまっています。今までのシリーズで気になっていたことが、この最終2部作ではさらなる展開の鈍重さにつながっていて非常に残念なことになっていたんです。

しかも『The Beginning』の退屈さは、そもそもの暗い物語、テンポ、大友監督の演出以外にも大きな問題がありました。これは後のネタバレありの部分で後述します。

そして、もう1つの『るろうに剣心』シリーズで気になっていた問題点、それは主人公の剣心とボスキャラ以外のキャラの描写がおざなり」ということ。
これまでにも感じていたこの不満点も、ぜんぜん改善されないどころか、『The Final』でいくらなんでもそりゃないよ!というレベルにまで悪化しているという事実に、本気でがっかりしてしまいました。

さてさて…ここから『The Final』のネタバレ全開で進めます。観ていない方は先にご覧になってください↓

ネタバレ:『The Final』はサブキャラの扱いがいくらなんでも……
『The Final』の不満点、それは弥彦と佐之助の扱いが本当にひどいということです。
佐之助はボコボコにされたとしてもまだ最終決戦に駆けつけてくれるけど、弥彦はシリーズ通して何の活躍もしていないただの添え物の子どもになっているじゃないですか。
剣心に道場を守ってくれと頼まれていたことへのフォローもないし!
彼らは第一回の人気投票では2位と3位につけているのに、あんな仕打ちはないよ……これはもう、はっきり役者のファンと、原作ファンは怒ってもいいレベルになっています。

さらには敵のサブキャラもどうでも良さげな狂人にしか見えない仕様へと改悪。
特に定食屋「赤べこ」に、敵の鯨波兵庫がやってくるシーンがないのは憤慨。あれは、その敵にも人間的なところがあることを示す、燕ちゃんの優しさを示す重要なシーンだったでしょ!

縁が死体袋を背負っていて、「原作のあの衝撃の展開を再現するのか…!?」と身構えていたら、実は「刀狩りの張の死体でした!」というのも、サプライズにしてもどうなんだ……シュールなギャグにさえ見えたよ。
張は原作ではこんな短絡的な裏切り者ではなく、京都編の後はひょうひょうとしている立ち位置のキャラだったんですが……この扱いに怒るファンも今そうです。

あと、これは僕だけじゃないと信じているんですが、1年以上前にビジュアルが発表された時点で、「新田真剣佑のメガネ小っさ!」が気にならないかなと心配していたんですが、やっぱり超気になりましたね。

 

すごくシリアスな話をしている最中でも「メガネ小っさ!」と思って話が頭に入らなかった。
さすがにスタッフも問題視したためか、この後はメガネをかけてたシーンがほぼなかったのは良かったですけどね。

そんなこんなで不満はたらたらなんですが、それでも『伝説の最期編』よりは流石にマシだったので、『The Final』のお気に入り点数は6点という着地。
最後の剣心VS縁の対決がしっかり盛り上がったし、サプライズ要員の神木隆之介こと瀬田宗次郎が(同じく十本刀の張との対比として)るろうにとなっていて味方になってくれるのも好きです。

ここから『The Beginning』のネタバレ全開です。観ていない方は先にご覧になってください↓

ネタバレ:『The Beginning』が冗長なのはちゃんと理由がある
『The Beginning』で描かれているのは、剣心が人斬り抜刀祭であった過去。ずっと鬱々としていて気が滅入るのは話そのものがそうだから仕方がないとはいえ、ずっとキャラの印象がほぼ変わらないということが辛かったです。

剣心は「新時代のため」と人斬りを続ける理由を繰り返し語っているけど、「なぜそこまで新時代の到来を信じて固執しているのか」の根拠は語られない。もちろん巴との出会いと生活が彼に人間らしさを取り戻すという描写もあるにはあるのですが、「剣心が野良仕事をしていて微笑んだ」くらいのもので大きな変化ではない。そこまでの話の多層性がないために、尺が長い割に話の内容が薄いという印象につながってしまっているのです。

また、時代は明治維新の直前であり、幕府と反対勢力のどちらもが己の正義を信じているという背景もあるのですが、これが剣心と巴の関係に直接結びついているものではない、あくまで背景であり、「それ以外」の話であるために退屈なのです。
しかも、ラストで戦うのが、それまでの新撰組ではない別の勢力であるため、余計に今までのつながりがなく興醒めしてしまいました。

そして『The Beginning』を観る前に思っていた最大の懸念、それは「もうオチを『The Final』で観ているんですけど…」ということでした。
「剣心が巴を斬ってしまう」ことは原作でもそうとはいえ、剣心が仲間にダイジェスト的に話した上に実写でも絵面として見せてしまうのは悪手でしょう。
さらに、「剣心が殺した男は実は…」「内通者の正体は…」という衝撃の事実もわりとサラッと流されていて、剣心の心の変化も見えにくく、普通にストーリーテリングが下手だという印象になっています。
総じて、「もうそれ知ってた」という冷めた感情で上書きされてしまいました。

しかも、その後に剣心は桂小五郎に諭され、やはり「ここで人斬りをやめては今までのことが無駄になってしまう」とコンコルド効果みたいなことを言う。それじゃあ剣心はこの話の中では何も学ばなかったし成長しなかったことになってしまう。その無情さ込みの物語として肯定できなくはないですが、少なくとも自分は好きな話だとは到底思えなかったのです。

そして、本作と同じエピソードを描くアニメ『追憶編』も観たら、こっちは面白かったんですよ。

Netflixでも配信されています。R15レベルの残虐描写もあるので注意。
こちらでは剣心の幼少期も描かれており、彼が人斬りにならざるを得なかった理由にも説得力があり、「子ども」の剣心が巴と出会い人間性を獲得していくまでの過程も、その穏やかな感情も込みでしっかりと描かれていました。
しかし、『伝説の最期編』ですでに描いていたためか、この『Beginning』では剣心の幼少期のエピソードはなし。剣心も巴も感情表現を抑えすぎていてキャラの変化に乏しい(演じている佐藤健有村架純のせいではない)。
これで上映時時間が『追憶編』の4作合わせての110分程度を超える137分になっているって…もう作り手の怠慢としか思えないレベルでした。

ただ人斬りを続けてしまうことに対しての葛藤の物語である『追憶編』は、そもそも話としては個人的には苦手でした。
その苦手部分が、この実写の『Beginning』ではより浮き彫りになってしまったという印象です。

この『Beginning』で良かったのは、ふん縛られた剣心が無双するオープニングのチャンバラの見せ場が面白かったこと、沖田総司役の村上虹郎がカッコ良かったことでしょうか。それ以外は、全くもって冗長で、残念な一本でした。

あの映画の構成だったら良かったのに
総じて言えるのは、この最終2部作は本当にもったいないなということでした。
初めに掲げた通り、このシリーズは本当に偉大であり、スタッフとキャストの本気が伝わってくる、それこそ誰もが認める名作としてずっと語られる可能性もあったのに、「ドラマパートが退屈」という感想が決して少なくない状況になっているのですから。

付け加えて、やはりこの最終2部作の構成は、やっぱり作品の印象としてはマイナスになってしまったと思います。
「どちらから先に観ても大丈夫」という敷居の低さ、『スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐』のような円環構造を成す「ここからまたシリーズを観たくなる」構造を目指したのかもしれませんが、事実上の最終作である『The Begenning』の後味が単純に悪すぎるのは問題でしょう。

じゃあどうすれば良かったかと言えば、あれですよ。カルト的な熱狂を生んだインド映画、非常に大胆な構成で「過去」を描いた『バーフバリ』2部作ですよ!

つまり、剣心が「妻の雪代巴を殺したのは、この私だ…!」と打ち明けるところで前編が終わり、後編で過去の剣心の無念をしっかり描いて、ラスボスの縁との最終決戦につながるんですよ。カタルシスが存分でめちゃくちゃ面白そうじゃないか!

本気で、この『るろうに剣心』2部作を、バーフバリ的に編集したバージョンが世に出ることを願っていますよ。

繰り返し語ってきた通り、スタッフとキャストの本気ぶりは邦画史上No. 1レベルなので、これならもったないと言わせない、名作になると信じています。

(C)和月伸宏集英社 (C)2020 映画「るろうに剣心 最終章 The Final」製作委員会
(C)和月伸宏集英社 (C)2020 映画「るろうに剣心 最終章 The Beginning」製作委員会