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『ミスター・ガラス』ラストに大感動した理由を語る(映画ネタバレなし感想+ネタバレレビュー)

今日の映画感想は『ミスター・ガラス』(原題:Glass)です。

シックス・センス』でおなじみ、みんな大好き(?)なM・ナイト・シャマラン監督の最新作です。

えーと、本作でネタバレなしで言えることは、とにかく映画史上最高レベルの一見さんお断りな内容であること。
「へぇ、よくわかんないけどホラー映画かな〜」などと、予備知識なく観に行くことは全力でオススメできません。
少なくとも「前2作」の鑑賞は必須、いや義務教育です。
※他の方の意見ですが、「初めてシャマラン映画を観たけど楽しめたよ」と思ったケースもあるそうです。

もう1つは、シャマラン監督を愛していた人にはたまらない内容になっているということ。
これまで監督の作品を丹念に追ってきていたら、もう感謝感激雨あられなことが待っていますから……。

どんなところに「ありがとう」と言うのか、どういう作品になっているのか……それを語ろうとすると、どう表現しようがネタバレになります。
シャマラー(シャマラン監督のファン)はもうただ観にいけ、それだけでいいのです。はい、以下は劇場情報です!行った行った!

<上映劇場|ミスター・ガラス|ディズニー公式>

さてさて、以下からは『ミスター・ガラス』本編のネタバレはまだしていませんが、「前2作」についてはネタバレしています。ご注意を!でもいいよね!宣伝とかで思い切り言っているし! 
あの映画とあの映画の続編だ!
さてさて、本作『ミスター・ガラス』は、2000年の『アンブレイカブル』と2016年の『スプリット』、その両方の作品に続く「続編」となっています。


その『スプリット』の大オチは「『アンブレイカブル』と世界観がリンクしていた!」ということ(それだけじゃないけど)なので、『ミスター・ガラス』の発表時にそれが否応なくネタバレするという、なんとも難儀なことにもなっていました。

『スプリット』の解説記事はこちら↓
『スプリット』ラストがなぜすごいのかを全力で解説する(映画ネタバレなし感想+ネタバレレビュー)

この2作に共通するのは「スリラー映画に見せかけてスーパーヒーロー(ヴィラン)の誕生物語」であるということ。
そしてこの『ミスター・ガラス』と合わせた3部作は“イーストレイル177トリロジー”という正式な名称として呼ばれています。

しかし、3部作の中で『スプリット』だけ配給会社が違うこともあり、この称は日本の宣伝は使われていないよう…
それどころか、今回はパンフレットすら作られていないことがちょっと話題になっていました。いやいや、これこそパンフレットが欲しくなる映画でしょうに……。

みんなスーパーヒーロー映画に出演しているよ!
何気に興味深いのは、主演を務めるブルース・ウィリスジェームズ・マカヴォイサミュエル・L・ジャクソンの3者ともが、この『ミスター・ガラス』の前にヒーロー映画(っぽいもの)に出演していることですね。

ブルース・ウィリス→特殊能力を持つスーパーヒーローじゃないけど、自力で悪を討つ自警活動をする男を『デス・ウィッシュ』で演じていた。このフード姿は『アンブレイカブル』のオマージュだったのかも?


ジェームズ・マカヴォイ→リブートした『X-MEN』シリーズでプロフェッサーX(ヒーローたちのリーダー)を演じていた。


サミュエル・L・ジャクソン→言うまでもなく『アベンジャーズ』をはじめマーベル・シネマティック・ユニバースでヒーローたちを取り纏めるキャラクターのニック・フューリーを演じていた。
あ、ついでにサミュエルは『キングスマン』で悪役(ヴィラン)も演じていましたね。


そんなヒーロー(ヴィラン)を演じていた超実力派ベテラン俳優が一堂に会するって……まさに「夢の共演」ではないですか。

あとこれくらいはネタバレじゃないと思うから言ってもいいと思うんだけど、サミュエル・L・ジャクソン演じるミスター・ガラスは映画が開始して1時間はまっったくセリフがありません。
おかげで「何を考えているかわからない」「廃人のようにも見える」という怖さと疑心暗鬼が際立つことに……流石の名演です。

家を失わなくてよかったね!シャマラン!
さらに重要なことは、シャマラン監督が自らお金を出して制作しているということ。
しかもその制作費を確保するために自宅を抵当に入れており、この『ミスター・ガラス』がヒットしなかったらシャマラン監督は家を失うところだったのです!(本国で無事ヒットしてよかった!)
それどころか、『ヴィジット』『スプリット』『ミスター・ガラス』の3本ともにシャマラン監督が自腹で作っていたという衝撃の事実!
これはひとえに、「本当に作りたいものを作るんだ!」という監督の気概の表れ。本当に応援したくなるではないですか!

あと、以下のシャマランのスピーチにもめちゃくちゃ感動した!『ミスター・ガラス』を観た後でも観る前でもいいからぜひ読んでみて!
「あなたは世界を変えるつもりでいるか?」 自分が無力であることを疑えとM・ナイト・シャマランは語る – ログミー[o_O]

そういえば、公開中の『メリー・ポピンズ リターンズ』も家を失いかけるお話でしたね。現実は時にはフィクションよりもドラマチックです。

正直ツッコミどころが……
というわけで、シャマランありがとう!大好き!でいいんですが、無視できない欠点もありまして……ぶっちゃけ悪い意味でのツッコミどころもそれなりにあります。
特に気になったのは、メインの舞台となる精神病院のセキュリティがガバガバなこと。
いや、まあ刑務所ではないのでそんなものかもしれないけど、2人も殺人犯がいるんだからもっと危機感を持って欲しいっていうか…。

また、それなりに視点が飛び飛びになり、会話劇が中心で、2時間9分という長めの上映時間もあってややダレてしまったことも事実。
シャマラン監督らしい「そこをそんなに重要っぽく描く?」ないびつな作家性もいつも通りで、ある意味で安心しました。

シャマラン監督は「どんでん返し」だけじゃないよ!
シャマラン監督の作家性はいつも一致しています。それは「心に傷を負った者がそれを克服する」「自分の果たすべき役割に気づきそのために奮闘する」ということ。

シックスセンス』の大ヒットによりシャマラン監督は「どんでん返し」が売りの作家であると捉えがちになっていますが、それだけで語るのはあまりにもったいないです。
そのどんでん返しは「自分の本当の果たすべき役割に気づく」という物語と不可分なもので、決して奇をてらっただけのものではない、尊い作家性であるとやはり支持したくなります。

とにかく、全シャマラーは絶対に、絶対に映画館で観なければなりません。
逆に、シャマラン監督の作品を一部しか観たことがない、全く知らないという方には1ミクロンたりともオススメできません。
繰り返しますが、絶対に、絶対に『アンブレイカブル』と『スプリット』を観てから劇場に足を運びましょう!おすすめです!

以下からは『ミスター・ガラス』本編のネタバレ全開ですのでご注意を!

 

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野暮な不満点
初めに野暮な不満点を挙げますと、ミスター・ガラスが精神病院で平然とドアを開けて出てきていたり、余裕でそこら中を歩き回ったりできることについて、明確な理由づけがなかったことです。
デイヴィッドから「あなたの特殊能力は?頭脳?」と質問されていたこともあり、彼の特殊能力が「精密機械を自由に操れる」ことなのかな?と思っていましたが、特に何もないとは……。いや、まあ、確かにおしゃべり好きの職員のクセを知っていて彼が来るまでの時間を利用していたりはしていましたけど。

また、機動隊員が揃いも揃ってシールドでデイヴィッドにアタックする姿には違和感しかありませんでした。銃を使えよ!

そして、デイヴィッドはケイシーの説得で懐柔できそうであったのに、そのタイミングで射殺されるというのが、作劇上の都合に思えてしまってモヤりまくりました……。精神病院(秘密組織)側は、なるべく殺害をせずに「説得」を試みようとしていたと思うんだけどなあ。

あと気になる方が多いであろうことは…大量殺人犯であるという事実は変わらないミスター・ガラスがあの結末を導くこと。
う〜ん、お前のおかげだけど、でも、う〜んと居心地の悪さを覚えるのも当然かなと……。ミスター・ガラスの母親が息子が殺人をした過去について自己批判的に言及していましたが、それだけだとやや不十分な気もします。

また、風間綾平さんの字幕は非常に丁寧だと思うんだけど、「LIGHT」は「照明」ではなく「光」にしたほうがよかったんじゃないかな?

あのロゴが復活!
初めに「ブエナビスタ」のブランドロゴが登場していたのにはびっくりしました。

 

これはウォルト・ディズニー社がかつて使っていたブランド名なのだけど、2007年に撤廃されているんですよね。言うまでもなく、『アンブレイカブル』の時はこのロゴがありました。

あの時の子役が大人になって……!
何が嬉しいって、2001年の『アンブレイカブル』の時には子供だったスペンサー・トリート・クラークが、そのままダン(ブルース・ウィリス)の息子役として(大人になって)続投しているということ。

そりゃ18年も経ってるもんなあ…という感慨以上に、父のサイドキック(相棒)として自警活動を手伝っているというのもグッと来ますね。

シャマラン監督本人によるセリフの意味とは?
大笑いしたのは、序盤にシャマラン監督が思いっきり出演していることですね。
しかも「昔に球場で会ったよね?」と言っており、『アンブレイカブル』でもシャマラン監督が演じていたキャラと同一人物であることがわかります。

さらに「よくない連中とつるんでいたんだけど、もうやめたんだ」という際どい発言も!
これはどう考えても、『エアベンダー』『アフター・アース』というビッグバジェット超大作を手がけたけど、批評的にも興行的にも大失敗したことの当てつけですよね。「もう俺は自費を出して映画を作る!そのほうがいい作品が作れる!」というような。

また、シャマラン監督は「住人の一人が殺されて」ということで、ダンのセキュリティ会社に監視カメラを買いに来ていたようですが、ひょっとするとこれは『レディ・イン・ザ・ウォーター』とも世界観がリンクしているということを示しているのかな?


レディ・イン・ザ・ウォーター』にもシャマラン監督はそこそこ重要な役で出演しているんですよね。
さらに同作は、「自分の果たすべき役割に気づきそのために奮闘する」というシャマラン監督の作家性がめっちゃ表れている作品でもあり、本作『ミスター・ガラス』で訴えられていることにもリンクしているとも言えるのです。

さらにシャマラン監督が「監視カメラ」を買いに来ていたということ……これもラストのオチのための「くすぐり」なのかもしれませんね。

ケイシーが幸せになってよかった……!
「よかったー!本当によかったー!」と思ったのは、前作ではその行く末がわからなかったケイシーが養子として引き取られ、子どもたちと楽しそうに暮らしていることがわかること(叔父は刑務所行き)。
『スプリット』のラストでは、「ケイシーが(性的虐待をしていた)叔父を殺してしまってもおかしくない」と思ってましたもの…。

そのケイシーが、まさに「闇落ち」しかけていたデイヴィッドの「光」になっていた、共依存でもあるけれど、お互いがお互いを救うきっかけになっている…ということにはやはりグッと来ます。

未公開シーンが復活!
ミスター・ガラスが幼少期に遊園地で遊ぶシーンがあるのですが、実はこれは『アンブレイカブル』での削除シーンだったそうです。
母親役のシャーレイン・ウッダードが若い!と思ったら、そりゃ18年前の映像だから!ここにも感動しました!

秘密結社の三つ葉のクローバー
本作のどんでん返しの1つは、謎の秘密結社が意図的に「スーパーヒーローの力を持つ者」を世に出さないようにしていたこと。
精神病院での「大した力じゃない」「論理的に超能力でないことが証明できる」といった問答も、そのためのものに過ぎなかったのです。

ステイプル医師の腕に刻印されていた三つ葉のクローバーは、四つ葉という幸運の象徴ではない「普通」を示しているのかもしれませんね。
※以下の指摘にも大納得です。


ヒーローはいる
本作のもう1つのどんでん返しは、マスターマインド(黒幕)であるミスター・ガラスの真の目的が「ヒーローパワーを世に知らしめること」でした。
大阪タワー」という舞台はマクガフィンに過ぎなかったのです(ちなみに建てられている場所のフィラデルフィアはシャマラン監督作にはよく登場し、それは監督の故郷でもある)
それは、スーパーヒーローの力を信じていた自分たちが「この世にいた」ことでの証明でもあるんですよね。

振り返れば、この“イーストレイル177トリロジー”は……
1作目『アンブレイカブル』はヒーローのオリジン(起源)の物語を、
2作目『スプリット』はヴィランのオリジンの物語を、
3作目『ミスター・ガラス』はヒーローの物語、またはヒーローという概念そのもののオリジンの物語を、
それぞれを描いていたと言えます。

ミスター・ガラスが「限定版の展開じゃない」「これはオリジンの物語なんだ」と言っていたことも、このラストの伏線……。
拡散された動画をみんなが見て、そのスーパーヒーローの世界(ユニバース)が広がっていく……。
ヒーローという概念そのものが、メタフィクション的に「現実」に及んでくると!
前述したような「心に傷を負った者がそれを克服する」「自分の果たすべき役割に気づきそのために奮闘する」シャマラン監督の作家性がこれでもかと表れた、そしてスーパーヒーロー賛歌そのものと言える、最高のラストだったよ!

余談ながら、『アンブレイカブル』が公開された2001年はまだインターネット黎明期で、こんなにサクサクと動画のアップと拡散は行われにくいんですよね。
このオチが3部作でなければなし得なかったのは言わずもがな、18年という時間経過によるIT技術の進化があってこそのオチになっているということにも感動しました。

エンドロールでは「割れたガラス」と共に、『アンブレイカブル』と『スプリット』のシーンの振り返り。
ガラスが割れたということは、まさに「概念を打ち壊す」ことをも示していたんでしょうね。

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