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『ヴァレリアン 千の惑星の救世主』ブッ飛んでいる理由はこれだ!(映画ネタバレなし感想+ネタバレレビュー)

今日の映画感想はヴァレリアン 千の惑星の救世主です。

『レオン』『グラン・ブルー』などで巨匠になったリュック・ベッソン監督最新作です。
それらの名作の印象しかご存知ない方にお伝えしておきますと、本作『ヴァレアン』はいろんな意味でとんでもねー内容になっております。これはすげえぞ!


アホのほうのリュック・ベッソン映画です!(歓喜
リュック・ベッソン監督は『TAXi』や『LUCY/ルーシー』といった底抜けバカ映画も多くも手がけておりまして、そちらも含めて愛されている監督です。
※『LUCY/ルーシー』のレビューはこちら↓
すべての真実 映画「LUCY/ルーシー」ネタバレなし感想+ネタバレレビュー

はい、本作『ヴァレリアン』もそっちの方向です。(やったあ!)
しょうもない(褒め言葉)ギャグ、バカップルのイチャイチャ、壮大なようでわりとミニマムでもある話、何よりは思いっきり1997年の『フィフス・エレメント』に通じていました。


実は『フィフス・エレメント』の時すでに『ヴァレリアン』映画化の話が出ていたのですが、ベッソンは「人間よりもエイリアンがたくさん出てくる映画なんて今の技術じゃ無理だよ!」と考えて断念していたそうです。
その後に映像技術が格段に進化し、2009年にはまさに革命と言える『アバター』が生まれたおかげで、ベッソンは「これなら映画を作れる!」と勇気づけられたのだとか。

そして本作は1億9700万ユーロとフランス映画史上最大の巨費が費やされ、VFXが使われたシーンは『フィフス・エレメント』の188ショットから2734ショットとめっちゃ増えまくるというバブリーなことになりました。

ベッソンのこだわりも半端なものではなく、200種類もいるエイリアンの特徴を詳細に記した600ページの本を作り、役作りの参考に俳優に読ませていたのだとか。どうかしているよ(めっちゃ褒めてる)。
※こちらの記事もすんばらしいのでぜひご参考に↓
映画『ヴァレリアン 千の惑星の救世主』登場のエイリアンまとめ ─ リュック・ベッソン監督「10回観ても把握しきれない」 | THE RIVER

クエンティン・タランティーノが『キル・ビル』を、ザック・スナイダーが『エンジェルウォーズ』を、三池崇史監督が『極道大戦争』を撮った時のように、「権威ある監督が巨費をかけて好きなように作った映画」がたまに生まれるのですが、その究極の自己満足映画を『フィフス・エレメント』と本作で2回もやったのはベッソンが初なのではないでしょうか。

その結果は全米では初登場5位、合計1憶3500万ドルを損失するという記録的な大ゴケに。
古典と言えるスペース・オペラを現代に甦らせた大赤字、というのは『ジョン・カーター』を思い出すよね……それも含めてなんだか愛おしい映画です。
※『ジョン・カーター』の記事はこちら↓
大赤字も超・納得「ジョン・カーター」ネタバレなし感想+ネタバレレビュー

宇宙版ズートピアでした
前述したように本編はお金をかけまくったVFXシーンがてんこ盛り、「なんだこれ!すげえ!」と思えるビジュアルこそが最大の魅力となっています。
難しいことを考えずにボーッと観ているだけでも「あー俺幸せだわー細かいことはどうでもいーわー」と思えるからそれでOKなのです。

 

サブタイトルにある「千の惑星」の造形がゴチャゴチャしているのもむしろ長所。
多種多様な宇宙人が共生しており、それぞれの個性が尊いものとして描かれる、しかも捜査をするのは男女のコンビってこれ『ズートピア』じゃないか!


ベッソン自身、「僕が作りたかったのは誰もが共生する映画、外国との間に壁を作らない世界です」と語っており、「それぞれの文化は素晴らしい」「それぞれが対立する必要なんてない」という多様性を訴えているんですよね。
ごめんよベッソン、バカ映画だなんて言って……すごく真面目で尊いテーマが描かれているじゃないか!
※こちらの記事もご参考に↓
リュック・ベッソン監督は映画『ヴァレリアン 千の惑星の救世主』で何を伝えたかったのか ─ 「僕はスーパーヒーローを信じない」 | THE RIVER

あと、始まって15分はほとんどセリフがなく、まるでサイレント映画のように「画だけで語る」というのも見所ですね。「言葉で説明せずに舞台そのもので多様性の素晴らしさを見せる」というのも『ズートピア』に通じています。
ここでのビジュアル自体もとんでもないことになっており、「宇宙で、ブッ飛べ。」「これは劇薬!」というキャッチコピーの意味が存分にわかることでしょう。

そうそう、「手がべちゃべちゃ宇宙人」が出てくるんだけど、その後の対応が大駄作『ギャラクシー街道』と正反対なのもよかったですね。あのブツは逆ズートピアな精神性を持っているもんな↓
※『ギャラクシー街道』の記事はこちら↓
ギャラクシー街道』真の映画史上最大の事故物件(ネタバレなし感想+ネタバレレビュー)

原作へのリスペクトも存分でした
本作の原作はフランスのバンド・デシネ(マンガ)の『ヴァレリアンとローレリーヌ』。1967年に出版され、なんと全23巻という長寿シリーズになっているそうです。
2007年から2008年にかけては、なんと日本のアニメ製作会社が手がけたアニメ版も放送されていたのだとか。
自分は映画を観た後に、(映画のエピソードがちょうど収録された)単行本を読んでみました。


読むと「映画化における再解釈」が上手く行われていることに気づきます。
固有名詞や細かな設定は変更されているものの、印象的なシーンや物語運びは踏襲されつつ、映画独自の展開でダイナミズムも作っているなど、かなり堅実な手法で映画に落とし込んでおり、ベッソンをなんだか見直しました(上から目線)。

ベッソンは10歳のころからこのマンガのファンだったそうなので、本作は巨費を投じた超贅沢な二次創作と表現して差し支えないですよね。
(ちなみに『フィフス・エレメント』も、この『ヴァレリアン』の原作コミックから影響を受けています)

デイン・デハーンが幸せそうでよかった!
本作のもう1つの魅力は、2人の主人公のキャラクターです。
かいつまんで言えば、まじめかと思いきやチャラ男&素直クールな女性というカップルで萌えるんですよね。
素直クール……その名の通りクールだけど素直な性格をしたキャラ。萌えジャンルの1つでツンデレの対義語に当たる。

 

「バカップルの珍道中なんて観てられっか!」という点で賛否両論はありそうですが、自分は圧倒気に肯定派。
序盤から膨大なセリフの応酬で、その言葉の端々からお互いへの信頼感や愛され方がわかるのでほっこりと笑顔になれました。
デイン・デハーンとカーラ・デルヴィーニュという美男美女カップルも実にどハマり。原作コミックとはぜんぜん違うビジュアルだけど、愛らしいのならいいじゃない!

あと、デイン・デハーンは『クロニクル』でこれ以上なく不幸な少年を演じていて、『アメイジングスパイダーマン2』でもダークサイドに堕ちてしまう「暗い」役が多かったんだけど、今回は史上最高のにこやかスマイルを見せてくれるのが最高。彼のファンは必見ですよ!

珍奇な日本の宣伝も支持します
本作は日本の宣伝の香ばしさにも触れておかなければいけないですね。
特に「吹替版で宇宙人トリオを演じるのは誰でしょうか?→THE ALFEEでした!」というのは誰が当てられるんでしょうか。

 

「芸能人を起用せずに本職声優を起用してくれよ!」というのは映画ファン(自分含む)の常なる願いだと思うんですが、今回はけっこう誠実とも言えます。
何しろ、芸人のゆりやんレトリィバァ本人は「観終わった頃には、みなさんの心にバブル(役名)がいると思います!」と熱意をもった上で役に臨んだばかりか「私のことは忘れて観て」とコメントし、THE ALFEEの起用の発表と同時に吹替の試写を開催して「上手かった!」という観客の声を届けており、ベッソン監督も吹替の出来をちゃんと褒めていたりもするのです。

炎上しない工夫がされているだけでなく、メインキャラに実力のある人気声優をちゃんお据えており、なにより吹替版を実際に観るとほとんど文句のないクオリティになっているんですよね。


なお、「ベッソン監督がイベントでゆりやんレトリィバァを不快に思って退席した」との報道もありましたが、これは記者による事実の捻じ曲げです。
こういう炎上狙いの記事には惑わされないように気をつけましょう。(ゆりやんレトリィバァが吹替で担当したリアーナを意識した「アイアムセックスシンボル!」のギャグは面白いとは思えないけど……)
※こちらを参考に↓
誤報レベル?リュック・ベッソン途中退場の原因がゆりやんにあるかのように書かれた日刊ゲンダイの記事に批判続出 – Togetter

なお、本作は「ドラッグをキメたスター・ウォーズ」などと揶揄されていますが、『スター・ウォーズ 最後のジェダイ』の公開日(2017年12月15日)に「めざましテレビ」で紹介されていたのもカッコいいなと思いました。


行き当たりばったりな展開だけど許せる
本作の明確な難点は、終盤に従って物語が尻すぼみになっていくこと
とってつけたようなサスペンスに止まっており、中盤のとんでもないビジュアルとのギャップもあいまって、どうにもテンションが落ちてくるのは否めません。

また、「展開が行き当たりばったりじゃないか!」「寄り道しすぎだろ!」という否定的な意見もよくみられるのですが、個人的にそちらはあまり悪い印象はありません。
行き当たりばったりであることを逆手にとったギャグもありましたし、「捜査の途中で右往左往しまくる」という珍妙さこそも作品の魅力に思えてきたもので……好意的に捉えすぎなのかもしれませんが、なんだかそのくらい優しい気持ちになれたのです。

明らかに「これ物語上ぜったいに必要ないよね?」と思うシーンもあるんだけど、ベッソンの「俺はこういうのがやりたいんだよ!」という魂の叫びが見られるので嫌いになれないんだよなあ……。
あと「イーサン・ホークの役はイーサン・ホークじゃなくてもいいだろ」感もすごいことになっていますが……いや、もうそれ逆に最高です。


そんなわけで超おすすめです。
リュック・ベッソン監督の「好き!」を煮詰めたような「突き抜けて作家性が出まくっている」内容ですが、圧倒的なビジュアルは誰が観ても楽しいと思うので意外と万人向けなんじゃないでしょうか。
3D効果は存分、4D演出もなかなかハマっていたのでお好みで選びましょう。

というか、以下の形容で少しでもひっかかった方は迷わず観ればいいんじゃないでしょうか。
・ドラッグをキメたスター・ウォーズ
ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー小津安二郎映画に思える
・酒飲みながら脚本書いてるだろ
・観るストロングゼロ

日本での興行成績も危ういことになっていそうなので、打ち切られないうちに早めに観に行きましょう!


野暮な不満点
マジメに残念なのはクライマックスがどうしても納得がいかないこと。
クズ野郎の司令官を突き出して「命令させる」作戦が失敗したおかげで惑星パールの人たちが撃たれまくっていたし、基盤が外れてしまって、爆破へのカウントダウンを止めるため部下が直そうとしているのをサスペンスにするのはいくらなんでも陳腐なんじゃないかな……。

オープニング曲はデヴィッド・ボウイ
何百年という人間と宇宙人の交流、そして多様な宇宙人が暮らす人工惑星・アルファが作られるまでを、デヴィッド・ボウイの「Space Oddity」に乗せて見せていくオープニングにはシビれました。

 

映画『LIFE! ライフ』でもこの曲が使われていましたね↓
現実の冒険をしよう 映画「LIFE! ライフ」ネタバレなし感想+ネタバレレビュー

歌詞にある「Major Tom(トム少佐)」とは「2001年宇宙の旅」の登場人物のこと。
「広大な宇宙の中で自分の無力さを感じてしまう」歌であることが、発展の歴史との良い意味でのギャップを作り出していましたね。

で、その後は惑星パールの人たちの暮らしと滅亡までを、ほぼ台詞なし(一部を除いて字幕もなし)でずっと見せるので「あっこの映画ヤバい」と思わせましたね。

さらには、ゴーグルをかけると市場が現れて、外すと砂漠しかないという、2つの世界を切り替えながら鬼ごっこをするというVR世代らしいビジュアルとアクションも最高!
こういうアイデアを最新の技術の映像化してくれただけでも「ありがとう……」と心から思います。

行き当たりばったりと壁ぶち破りガバガバ捜査
中盤からは主人公2人に「大量破壊兵器とその裏にいる殺人者を探せ」というミッションが告げられることになるのですが、ヴァレリアンが速攻で行方不明になって、ローレリーヌが三バカトリオの宇宙人を頼って飲んだくれのオヤジの潜水艦に乗ったり、クラゲを被って行方不明のヴァレリアンの居場所を把握したり(原作にもあるどうかしているアイデア)、ローレリーヌが綺麗な蝶のルアーで釣られたり、ヴァレリアンがリアーナが扮したショーを観に行ったり、傲慢な皇帝のお食事現場に潜入したり、寄り道ばっかり。いや、不可抗力なところが大きいんだけどさ。

その前に、ヴァレリアンが最短距離を行くために壁をぶち破りまくって強引に突破(作中最高のドラッギーなシーン)→ローレリーヌ「ごめん81と18を間違えちゃった☆」ということも、この行き当たりばったりな捜査を象徴していますね。こいつら本当に優秀な捜査官なのか?
この壁をぶち破りまくること=人種間に境界なんてないんだ!という尊いメッセージにも思えます(そうか?)
そんなローレーヌのド失敗にし対して、「気にするな!人間誰にでも失敗はあるよ!」とフォローしてくれるヴァレリアンも大好き。結婚したい。

大笑いしたのは、ヴァレリアンが「僕を信じろ!」と言って、ローレリーヌとバブルと共に「ウワーーー!」と敵軍に突進→と見せかけて穴に落ちるシーンですね。よくローレリーヌは信じたな!
あと、自由に姿を変えられるバブルが「ちゃんと準備をしないと……」と言ったのに対して、ヴァレリアンは「多少アドリブがあってもいいだろ」とほざいていたな。お前適当すぎるだろ!

で、ミッションのことがほったらかし、これからどこに行けばええんやというタイミングでヴァレリアンが開口一番「プリンセスが心の中で導いているんだ」ですからね。
ローレリーヌが本気で呆れた顔をしていることと、「じゃあレディファーストで」というのも可笑しいなあ。
しかも、そのプリンセスが導いているとかのヤバい発言がマジだったというオチまでついています。うん、やっぱり行き当たりばったりな物語も超肯定できるね!(そうか?)

隠蔽
黒幕は人間の司令官。彼は惑星パールに知能を持つ宇宙人がいることを知りつつミサイルを撃ち、あまつさえその事実を部下を殺してまで隠蔽をしようとしていたクズ野郎でした。
彼が「そうしないと責任を取らされて経済が破綻するぞ!それでもいいのか」と訴えるのも最低ですな……自分(たち種族)のことのみを優先する浅ましさよ。
ヴァレリアンが「2人だけで話をしましょう」→思い切りぶん殴る→「いい会話ができた!」というのは痛快でした。

この「政府による事実の隠蔽」というのは日本ではとてもタイムリーな話題ですよね。奇しくも、同日に公開された『ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書』もそういう話です。


パールのような宝石を複製できる生物・コンバーターを渡そうとはしなかったヴァレリアンに対して、ローレリーヌはこう告げました。
「あなたも司令官と同じ。自分のものは自分のもの、誰かのものは自分のもの」
「彼らはあれだけのことをされたのに、許そうとしている。それこそ愛よ」
「愛は何よりも屈強な力」
「君のために死ねるなんて言わなくていい、信じてほしいの」

また、ヴァレリアンを助けて死んでしまったバブルは「たとえ愛していてもいやしき者よ」と言い放ち、自分が姿を変えられるがゆえにアイデンティティを保てないことを卑下していましたが、ヴァレリアンには「君は誰よりも自分を持っているよ」と肯定してくれました。

愛を信じること、それは何よりも優先される。しかし、そのために死ななくていい。
直接的なメッセージですが、これこそ真理でもありますよね。(ローレリーヌが「段取りは嫌い」と言っていたことも、それよりも勝る愛があるという伏線になっています)

パール人のように許すこと、ローレリーヌのように愛を信じること、ヴァレリアンがローレリーヌを信じたこと、自分を信じてくれたバブルを肯定してあげること……それこそが人種間をも超えた平和へのメッセージにつながっている、というのが素敵です。

ラストシーンは、カプセルの中でたとえ「約束した本物のビーチ」でなくともキスをして愛を育んでいるヴァレリアンとローレリーヌの姿。
リュック・ベッソン監督の思い入れも含め、良い意味で過剰なまでの愛を感じる作品でした。