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『DESTINY 鎌倉ものがたり』山崎貴印の無神経さが炸裂!(ネタバレなし感想+ネタバレレビュー)

今日の映画感想はDESTINY 鎌倉ものがたりです。

はい、ごめんなさい。オススメしません。
しかし世間的にはそれなりに好評な作品なので、クリスマスに酷評している自分のほうが間違っている気がするけどまあいいや、いってみよー!

ちなみに、こんなクリスマス映画もおすすめだよ!という記事を書いていました↓
恋人たちのイチャイチャなんていらない!悪意たっぷりなクリスマス映画10選! | シネマズ by 松竹

他にもシネマズ by 松竹では、ライター陣がいろいろなクリスマス映画を特集していました。みんなポジティブな映画をよく挙げるよね……(それが普通です)↓
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原作からの再構築は褒めよう!
本作の原作は西岸良平による同名の漫画です。


同じ西岸良平原作+山崎貴監督+英語つきタイトルということで、『ALWAYS 三丁目の夕日』に続け!という商魂たくましい感じがバリバリですね(棒読み)。

それはともかく、映画の後に原作(総集編の上下巻)を読んでみたところ、いやはや、感服いたしました。
なにがって、原作からエピソードの選出と再構成、映画オリジナルのクライマックスに繋げるための大筋の物語は存分に工夫されていたからです。
原作既読であると「ここでこの話が出てくるのか!」と驚けますし、短編エピソードの連続に終わらせず、前後を入れ替えることである程度のダイナミズムを作り出すことにも成功しています。

さらに、序盤からわかりやすい伏線をたくさん忍ばせておいて、きっちり回収していくのも好感が持てました。
原作の要素をしっかり拾いつつ、映画にしか無い伏線で驚かせるとは良いではありませんか!いやはや、山崎貴(今回は単独で脚本担当)をちょっとだけ見直しましたよ!

山崎貴印のVFXはさすが!
妖怪たちのVFXおよび、黄泉の国の造形も素晴らしかったですね

 

千と千尋の神隠し』のパクリだなんだと言われていますが俺もそう思うけど山崎監督の「好きなビジュアルや設定を自分の監督作に恥ずかしげもなく取り入れる」作家性は実は嫌いじゃなかったりします。

山崎貴監督の既存の傑作を模倣した例>
ALWAYS 三丁目の夕日』:傑作『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』に触発されたと思われる昭和ノスタルジー満載。
リターナー』:ターミネーターマトリックスE.T.ブレードランナーっぽさが多々。
『STAND BY ME ドラえもん』:ピクサーっぽさ多々。
BALLAD 名もなき恋のうた』:ていうか傑作『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦』を原案とした実写作品。
まあいいではないですか、おかげで見た目だけでも十分楽しめるんだから。

安藤サクラの死神が最高!
本作でさらに素ん晴らしいと思えたのは、安藤サクラ演じる死神のキャラですね。
原作では見た目普通の死神であったのですが、女性のキャラに変えて「〜っすよ」な話し方をする仕事人にしたことで愛らしさが倍増!
こんな漫画チックなキャラを見事に演じられる安藤サクラはさすがと言うしかありません。

 

そういえば國村隼がチョイ役で出演しているんだけど、『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』といい『鋼の錬金術師』といい、出てきた瞬間の國村隼力がものすごいですね。さすがの存在感です。

ディスりポイントを総まとめだ!
えーと、すみません、良いところは以上。ここからは全開でディスります。

まずね、主演の堺雅人高畑充希も含め、山崎監督ならではのわざとらしい演技がしんどいんです。
妖怪も出てくるファンタジーな世界なので多少は受け入れるかな、と思っていたらそんなことはなかったですね。
驚いた時も「(変顔で)きゃあああーーー」「(変顔で)いぇええ”ええ”ーーー」な感じのリアクションで、なんかもううんざりしました。
この夫婦のラブラブっぷりは普通はほっこりしながら観るべきところだとは思うんですけど、個人的には死んだ目になるだけでした。

 

劇中の年代設定がさっぱりわからないのもしんどかったですね。
黒電話があるのに100円ショップがあったりして、適当に世界観を作っているとしか思えませんでした。
(フォローしておくと、原作では連載時期に合わせて1980年〜1990年代の文化が登場しており、ちゃんと100円ショップについても言及されていました)
全体的にこのファンタジー世界を信じられないというのは致命的なのではないでしょうか。
そういえば、ただの遊園地をゼズニーランドと言い張っていたな。そこは遊園地にしたらいいじゃん。

伏線回収をしているつもりでも、脚本が雑すぎてツッコミどころが多すぎるのも致命的。
原作から要素が統合されたキャラがいるのですが、おかげで「なんでこの人がそんなことになるの?」な練り込み不足も散見されました。
これに比べれば『スター・ウォーズ 最後のジェダイ』の雑さなんて全然許せるよ!

あとね、死んだ人について「生きている人間とほとんどおんなじじゃん!な〜んだ」な感じな軽い扱いだったのもひどく気に入りません。おかげで「黄泉の国に行く」という終盤の展開も切実さがなくなっています。
(原作では死が重いものと描かれたエピソードがしっかりありました)
日本の死生観については、『KUBO クボ 二本の弦の秘密』のほうが500億倍敬意を払っているよ!

あとは山崎貴監督印の「泣かせ」演出が間延びしてしんどいとか、やっぱり音楽が大仰だとかもありますが、それらはいつもに比べればマシでした。マシというレベルではあるけど。

うん、まあ、本作を気に入らなかったのは心の狭い自分が悪いんであって、これらのディスりポイントが気にならないという方であれば好きになれるんじゃないでしょうか。
ビジュアルと豪華キャストの共演だけでも、そこそこ満足できるんじゃないでしょうか……オススメはしませんけどね。

※映画を観た後のテンションは以下。原作を読んだらちょっと評価が上がりました。


※鎌倉を舞台した作品であれば、今年公開されたアニメ映画『きみの声をとどけたい』もどうぞ。


以下は結末を含めてネタバレです。今回はツッコミ入れているだけなんで、この映画が好きな人にはごめんなさい。↓

解説(ネタバレ)を閉じる
イライラする推理
えーと、原作は殺人事件などの謎を解くミステリーの要素が強めでしてね、本作でも「犯人はすぐそばを通っていた江ノ島電鉄に飛び乗って現場にたどり着いたんだ!」と推理する場面があるんです。そのトリック、窓の外の電車見た瞬間気づかないですか。

原作では「すぐ側を電車が走っているんだな」と示す程度なのであんまり問題はないんですが、映画では窓を見た瞬間電車がゴーッ→「近っ!」とオーバーリアクション→「ここをロープで降りたら下の部屋から見られちゃいます」→駅まで行ってからやっと「そうか!電車の上に乗ったんだ!」気づくので観客をバカにしてんのかと思いました。

あと、原作では「江ノ島電鉄の多くは無人駅なんだ」といったうんちく込みで推理がされていたのですが、そこもオミットされていましたね。まあ時間が限られているから許せる範囲だけど……。

なぜか貧乏の編集者
編集者の本田が死んだ後、なぜか本田の家族が家賃が払えなくなるくらいに困窮しているのは納得しかねますね。
原作では病気の治療費でお金がなくなったことが示されていたのですが、映画ではいきなり「余命一ヶ月」なのでそんなふうには見えないよ……。(貧乏神が取り付いていたというなら納得できたのに)
あとこの時に大家さんが「慈善事業じゃないんですよ!」とありえねーセリフを言うのもキツい。これ原作で別のエピソードで出てきたセリフなんだけど、無理やりぶっ込みすぎだよ!

そして本田の死後、妻に片思いをして遊園地デートまでしている男性も登場するのですが、それに対して本田が「早すぎるだろ!」というに触れないというのもしんどい。
原作ではこの男性は4年が経ってから登場していたのですが、映画ではせいぜい数日経ってから登場したようにしか見えません。こういうところで人の死についての認識が軽いのが好きになれないのです。

なぜそのオプションを選ばない?
編集者の本田は、死神から「この世に留まるには奥さんと娘から命をもらわなければいけない」と言われ、他の方法として妖怪の姿になってしまう「魔界転生」のオプションを選ぶんですね。
(本田はこの時に「白昼堂々と妖怪の姿はイヤだな〜」と言っていたのに、普通に遊園地に風船持って行っていた気がするけどそれは100歩譲って許そう)

で、亜紀子も霊体となり、身体が見つからなくなったおかげで、強制的に先生の命を削ってしまうことになったので、黄泉の国に行く(先生とお別れする)という選択肢を選ぶんですね。
この時に「魔界転生」選べばいいんじゃね?

先に示された設定をガン無視したことにイライラしたのですが、この後の先生が「本田が遊園地で亜紀子を見たと言っていたことを思い出す」→捜査班のよくきく鼻で探すという流れもダメだろ……!
身体が無くなっていることは変わらないんだから、遊園地でみかけたどうこうを聞くよりも先に鼻で探すべきだろ!

こういうところが本当に雑なので、もうまったくノレなくなりました。

10000歩譲っても許せませんでした
他にも、
黄泉の国が人によって姿が違うんだったら亜紀子や父親が見た黄泉の国のビジュアルも見せてくれよとか、
黄泉の国の駅員がざーとらしい演技で「覆水盆に返らずってね!あっ、お盆には帰ってくるか!あはは!」とほざくのが心底うざかったりとか、
「天頭鬼と永遠に添い遂げることを誓います〜」のシーンが引き伸ばしすぎでイライラするとか、
もういろいろ言いたいことはあるんだが、そこは10000歩譲って許そう!

だがな!先生には急遽告げられたあさってまでの締め切りがあったはずなのに、それをぶん投げているのは納得できねえぞ!
最後は先生と亜紀子が玄関でニッコニコして終わっていましたが、自分はため息をつくしかなかったよ……。

さらに、亜紀子の身体を借りていた家族の「その後」が描かれないのも納得できません。
原作ではしっかり「もう大丈夫です」といったことが告げられていたのに、映画では子どもにも土下座させて謝らせた後はぶん投げなんですよ!

総じて、山崎貴の脚本には、こうした無神経さが散見されるのが超しんどいんです。
原作で納得できた死の扱い方、ドラマの組み立ても、その無神経さのせいで台無しになっています。
そういえば、この人『STAND BY ME ドラえもん』でも「ドラえもんを強制的に教育させる成し遂げプログラム」という原作ファンにとって激怒モンの改変をしていたりしていたな……。

えーと、東京オリンピックの演出を担当されるんですよね……?大丈夫かな(超不安です)。